はじめて猫を飼うときのアイディア

●保護した子猫の場合
●子猫の食事
●もしあなたの家にすでに他の先住猫がいる場合
●ブリーダーさんから譲ってもらう場合


私は昔、道を歩くたびに捨て猫に遭遇していた時期がありました。
拾った猫はきれいにして、猫配りにせいを出しました(笑)。
最近は、めっきり捨て猫の姿を見ることが少なくなったけれど
(意識的に捨て猫が多そうな場所に足を踏み入れないようにしているのかも・・・)
それでも海や学校、公園、動物病院の前には捨て猫が多いと聞きます。

一度動物病院で診察を待っているとき、こんな光景に出くわしました。
作業服を着たおじさんが、小さな箱を小脇に抱え入ってきて、それを受付の机の上に置きました。
看護婦さんは心得ているのか、すぐに院長先生を呼びに奥に行き、
出てきた院長先生も顔なじみのおじさんと挨拶を交わし
「またかね、困ったことだねぁ」と。
「いやぁ、気がついてよかったけんど、機械まわしてたらオシマイよぉ」
おじさんはゴミ回収車の作業員で、
収集中の黒いゴミ袋が一瞬動いたので手を止め中を開けてみたのだと言いました。
その中身がこの小さな箱の中に入っている、まだ生後2週間ほどの2匹の子猫だったのです。
出した人がこれを「生ゴミ」だというのなら その認識には悪寒が走ります。
思わず「前もこんな事があったんですか?」 と私が尋ねると
「2回目だね」と。
汚れて節くれ立ったおじさんの手を思わず握りしめたくなりました。

2匹の子猫は動物病院で手当を受け、
自力でご飯を食べられるようになるまで面倒を見てもらって、ワクチンを接種され
無事新しい里親さんのもとに引き取られていきました。


あなたが、初めて猫を飼うことになったら
その猫がこのような保護された猫と、
ブリーダーさんの家で生まれて大切に育てられた猫とでは、
最初にあなたがしなければならないことにかなりの違いが出てきます。



●保護した子猫の場合

まず子猫がどの程度の月齢であるか調べましょう


■とても小さな子猫の場合

◆目は開いていますか? 子猫の目が開くのは生後3〜7日頃からです。
◆歯が生えていますか? 指で確かめてみて下さい。歯が生え始めるのは生後3〜4週間頃からです。
◆自分で何か口にすることが出来るでしょうか? お皿に子猫用ミルクを入れて与えてみましょう。(猫に人間の牛乳を与えと下痢の原因になります。) 自分から口をつけてペチャペチャと飲むことが出来るなら (おおよそですが)生後3週間以上たっていると考えられます。
◆目の色がどうでしょう。
生後8〜20日で目は完全に開きますが最初の頃の目の色は灰青色です。生後12週頃からその猫本来のアイカラーに変化し始めます。

■もう少し大きな子猫の場合

◆乳歯が残っているどうか調べてみましょう。 生後3〜6ヶ月頃の間に乳歯が抜け永久歯に変わります。
一般的には犬歯や一番奥の大きな歯が最後に抜けるので、歯の状態でおおよその月齢を想像することができます。
◆運動能力 這う・歩く・走る、や、体重でその子猫の月齢を考えるのは無理があります。
子猫の成長はその子猫の栄養状態などによって、かなり個体差が大きいと考えた方がよいでしょう。


■子猫を保護した場合は、それぞれの月齢に合わせた対処をしてやる必要があります。

◆小さな子猫の場合は、特に保温してやる必要があります。 もちろん季節によりますが、人間が靴下を欲しいと思う寒さなら 寝床の一番下に使い捨てカイロなどを滑り込ませてやって下さい。子猫に直接カイロがふれないように、工夫・注意して下さい。
◆もっと小さな場合、生まれて数時間〜数日の子猫で 体温が下がっている場合はお湯につけるという方法もあります。しかし、その月齢の子猫の体温が一度下がってしまった場合は かなり危険な状態を意味し、予後は難しいと思われます。すぐに獣医師に診せて、処置していただいた方が良いでしょう。

■保護した子猫の身体に外部寄生虫がついていないか調べましょう。
◆ノミ・ダニはすぐにわかると思いますが、もし、ある程度大きな猫で、毛が長かったり、毛の色が濃かったりするとノミを発見するのは難しいかも知れません。今はノミ退治のための非常に優れたお薬が発売されていますので、速やかに獣医さんに連れていき、駆除の方法を教わって下さい。1匹のノミがもしメスで卵を抱えていたら、早ければ2〜3週間後にはあなたはノミの繁殖家となっているでしょう。
◆ 保護した猫がよほど弱っていなければ、すぐにお風呂場に直行し、ノミ取り用か皮膚の殺菌作用のある薬用シャンプーで洗ってあげてください。 しかしそれらのシャンプーで洗ったとしても、ノミが完全に捕れたとは思わないで下さい。ノミはあなたの想像以上にタフで、しつこい嫌な奴らです。
◆もしシャンプーしたら、完全に乾かしてやる必要があります。
◆ドライヤーを使うのが一番早い方法ですが、ほとんどの猫は(全てといっても良い!)ドライヤーが大嫌いです。ブワァオーというモーターの音と風が苦手なのです。何枚もタオルを代えて、よく水分をふき取り、冬場などで温風ヒーターがあればその前に猫を抱いて陣取り ゆっくり乾かすのが一番猫を刺激しない良い方法でしょう。

◎ノミのお薬についてをご覧ください。




●子猫の食事


■拾った子猫が生後3週間以内の場合

人間が手助けをして人工哺乳してやる必要があります。

必要なもの
針のない注射器かスポイトか小動物用の哺乳壜、子猫用のミルク

生後7日まで 
3〜6回
2時間おき
生後7〜14日 
6〜8回
昼間は2時間おき・夜は4時間おき
生後14〜21日
8〜10回
昼間は2時間おき・夜は1回

ミルクの温度は38.6度、人肌より少し暖かい程度

■子猫に哺乳するときの注意
◆無理強いしないということです。むせて気管にはいると肺炎を引き起こす原因になりますので、注意して下さい。
◆子猫が飲むのを嫌がったら、それを終了の合図だと思い、2時間後にまた新しくミルクを作って与えます。
◆飲み残しは決して使わないで下さい。細菌感染のおそれがあります。
◆使用後の哺乳壜などは、きれいに熱湯で洗うか、人間の赤ちゃん用の哺乳壜洗浄剤入りの薬品につけて保存しておきます(ミルトンなど)。

■ 哺乳が終わったら
◆ティッシュペーパーで子猫のお尻を刺激して、オシッコとウンチをさせて下さい。少しお湯につけて暖かくしたティッシュの方が効果的なようです。
◆オシッコは寝床の敷物ですれたときにもよおし、出ることも多いですが、ウンチは最低1日1回必ず出ているか確認して下さい。便秘でも死に至ることがあります。
◆どうしてもウンチがでにくい場合は、下半身だけ少し熱めのお湯に浸してお尻をマッサージしてみてください。
その後は必ずよく乾かしてあげてください。
◆それでも頑固な便秘の場合は、赤ちゃん用に細い綿棒の先にベビーオイルをつけ、お尻の穴から差し込み、ウンチを絞り出す。。。という強硬手段もあります(苦笑)。


■生後3週間以上、自分で食べられる子猫の場合
◆猫は人間用の牛乳を消化する能力に乏しいので、子猫用と指定されたミルクを用意して、分量・温度などはその指示に従ってください。
◆近くにペットショップがなくて、動物用のミルクがすぐに手に入らない場合は、コンビニなどでも売られているスキムミルクで代用できます。人間が飲むより心持ち薄目に溶かし与えて下さい。私の経験では子猫用のミルクが嫌いな子でもスキムミルクは大好きでした。
◆あまり飲み慣れていない子猫は、鼻でミルクを吸ってしまって、むせるかも知れません。
◆ミルクは浅いお皿に少量ずつ入れてあげて下さい。
◆もう少し食べ物を欲しがるようでしたら、ネコ用の缶詰かドライフードをお湯でふやかしたもの、鶏のささみをゆでたものなど、その子猫の食欲に応じて与えて下さい。

■子猫は案外よく食べるものです。

◆乳離れの時期の子猫は体重30グラム当たり、成猫の3倍の食事量を必要とします。


■子猫の食事の量は、どのくらいが適当か?

◆これは個体差によるので何ともいえません。
◆少しずつ便の様子を見ながら増やしてやって下さい。
◆生後4−5ヶ月までは1日4回ほどに分けて食事を与えるのがベストでしょう。

体を綺麗にし、お腹がいっぱいになったら、きっと子猫はもう夢の中。
ゆっくり休ませてあげて下さい。



●もしあなたの家にすでに他の先住猫がいる場合


◆すべての検査が済むまで決して新しい猫と会わせないよう、注意して下さい。
◆目に見えるノミなどの外部寄生虫以外に、ウンチの中には内部寄生虫(回虫・条虫・鉤虫・鞭虫他)がいるかもしれないし、何より恐ろしいウイルス性の病気にかかっている可能性があります。猫風邪やパルボ、猫エイズ、猫白血病など。
◆とにかく一度獣医師による検便・健康診断を受け、ウイルス性の血液検査を依頼し、すべての結果がクリアだとわかるまでは絶対に先住猫とのご対面をさせないで下さい。
どんなに健康そうに見えても、何かあってからでは取り返しがつきませんから。
あなたの大切なパートナーを守るために、可哀想だと思うかもしれませんが、新しい猫はケージなどに入れて、別の部屋に隔離し、その猫を触った後は必ず手洗いを行って下さい。



●ブリーダーさんから譲ってもらう場合


ブリーダーさんから買った場合は、上記のような事はまずないと思いますが
「買う」と決める前に決めておいた方が良いことが沢山あります。


■自分が飼いたいと思っている猫はどの様な猫なのか?

猫種によっては性格も習慣も手入れも様々・多様です。
猫種よっては特有の問題を抱えているものもあります。
まず飼いたいと希望した猫の生態を知りましょう。
これはブリーダーさんに直接聞くのが早いでしょう。

■飼う住宅環境についてもよく考えてみましょう。

マンションなどの共同住宅で飼う場合、あまり鳴き声が大きくない方がよいとか、大型になってどたばた走り回る音が下に響かないか……など、もちろん、ペット可住宅であるかどうかの確認もお忘れなく!
仕事で帰れない、留守の間の留守番は・・・?よく考えてシュミレーションしてください。

■他の家族のご意見は・・・?
ご家族と一緒に暮らしているのなら、他のご家族の了承も得てください。何かあったときに、ご家族の協力が必要になるかも知れないし。。。飼うならば、みんなに認めてもらってください。

■最低12年以上、その猫の寿命がくるまで、
例えば結婚しても・・・赤ちゃんが産まれても・・・転勤になっても・・・飼い続ける自信がありますか?

■繁殖するのか?それとも不妊手術を施すのか・・・?
これも最初に考えておいてください。繁殖を希望するのであれば、その旨をブリーダーさんに伝えて、繁殖にむいた子猫を紹介してもらいましょう。
そして、繁殖について、勉強してください。


■ブリーダーさんへの確認
◆事前に父猫・母猫の写真や以前に生まれている子猫の写真を見せてもらうのも良いでしょう。

◆血統の確認もしておきたいものです。
自分がこれから手に入れる猫が、近親交配を繰り返して作り出されたトップショータイプの猫であるとわかっていれば、もし何らかの問題が起きたときにも心の準備ができますが、ショーなどにこだわらず家庭内での良き伴侶としての猫を求めているのなら、できるだけ近親交配されていない健康な子猫を探しましょう。

◆両親猫の血液検査結果、最終ワクチン接種日の確認もしておきましょう。

◆何度か電話や手紙のやりとりをし、ブリーダーさんとの信頼関係を深めておきましょう。
何かあったとき一番頼りになって、相談ができるブリーダーさんであれば非常に心強いですから!
またブリーダーさんにしてみても、自分のうちで生まれたかわいい子猫の行き先は気にかかるものです。
どんな人が、どんな環境で飼って下さるのかしら?ブリーダーさんを安心させてあげて下さい。

◆あまり小さな子猫を欲しがらないようにしましょう。
生後40−50日の子猫がペットショップの店頭に並んでいる国はおそらく日本だけでしょう!
最低でもブリーダーさんの家で最初のワクチンを済ませてから。できることなら2回目のワクチン後まで母猫と共に生活させてやる方が、もらってきてからも安心できるます。
すでに何匹も子猫を育てた経験があるとか、そのブリーダーさんからもらう猫が2匹目であるとか、事情が分かり合っている仲であるなら、生後2ヶ月で譲り受けるのも良いでしょうが、そうでないなら、時間的余裕を持った方が良いと思います。
時々私の所にも、自分で離乳させたいから、小さなうちに欲しい、と電話をかけてくる方がいらっしゃいます。
「子猫はあなたのおもちゃではありません!」

◆簡単なものでかまいませんから、契約書的なものを取り交わしておいた方が何かの時に問題がないと思います。
・血統書は発行されるのか?
・TICA、CFAナンバーが付くのか?
・去勢・避妊をする必要があるのか?
・もし譲り受けてから何時間か以内に子猫の具合が悪くなったときは?
・別途料金を請求されるかもしれませんが、子猫の血液検査・検便・健康診断を依頼しておきましょう。
などなど……


子猫は“なまもの”です。
消費期間があるわけではありませんが(笑)、取り扱いには注意が必要です。

最後に、どんなに気を付けて管理されたキャッテリーの子猫でも、
ひとたび外に出たら、突然問題が起きる場合もあることを理解して下さい。
2回のワクチンを済ませて、血液検査でも健康診断でも異常なく、
ブリーダーさんの家で元気で飛び跳ねていても、
新しい家に着いた途端くしゃみが始まることもあるのです。

2000.5

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